前回のコラムの続きです。
求職者の方にクリニックへ来院していただいたら、まずはクリニックのオリジナルテストを受けていただき、その後、面接を行います。

面接には、できればマネージャーや配属予定部署の主任・リーダーにも同席してもらいます。
自分たちも採用に関わり、「自分たちが一緒に働きたいと思って採用した人材」という意識を持ってもらうことで、入職後の教育・育成にも責任を持ってもらうためです。
面接では、履歴書・職務経歴書だけではなく、適性検査やクリニックのオリジナルテストの結果も参考にしながら、総合的に求職者を見ていきます。
面接では「何を聞くか」以上に「どう答えるか」を見る
先生方から、
「面接では何を聞けばいいですか?」
とよくご質問をいただきます。
もちろん質問内容も重要ですが、それ以上に私が重視しているのは、こちらの質問に対して適切な回答が返ってくるか、会話のキャッチボールに違和感がないか、質問の意図を理解して回答できているか、といった点です。
さらに、一つの質問に対する回答をもとに、質問を重ねながらどんどん深掘りしていきます。
その中で、求職者の考え方や仕事に対する姿勢を把握し、クリニックの中でドクター・スタッフと協調して働けるか、入職後に自身の長所を活かして活躍できそうかなどを見ていきます。
なお、面接担当者による主観や印象だけで判断しないよう、あらかじめ質問項目や評価基準をある程度統一しておくことも重要です。
「本日の面接のために、どのような準備をしてきましたか?」
私がよくする質問としては、ありきたりではありますが、まず、
「本日の面接のために、どのような準備をしてきましたか?」
と聞きます。
例えば、クリニックのホームページやSNSを確認したうえで、自分の長所について自己分析し、
「入職後には、自分の〇〇という長所を活かして、クリニックの〇〇に貢献したいです」
といったところまで回答できる方は、優秀な人材である場合が多いと感じます。
さらに、志望動機についても、クリニックのMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を把握して、
「この考え方に共感しました」
「一緒にミッション・ビジョンを実現していきたいと思いました」
「そのために、自分の〇〇という長所を活かして貢献したいです」
というところまで回答できれば、さらに高く評価します。
将来のキャリアについても確認する
さらに、
「今後、仕事を通じてどのようなことを実現したいですか?」
「これからどのような仕事に挑戦してみたいですか?」
「3年後、5年後に仕事の面でどのように成長していたいですか?」
といった、仕事やキャリアに関する将来像についても聞きます。
ここまで具体的に答えられる方であれば、自分自身のキャリアについてしっかり考えている可能性が高いと判断できます。
一方、採用面接では、本人の適性・能力と関係のない家族・家庭環境、本籍・出生地、宗教、支持政党、人生観・生活信条など、就職差別につながるおそれのある事項を質問しないよう注意が必要です。
あくまでも「仕事」「職務」「キャリア」に関連する範囲で確認していきます。
職歴と退職理由には「一貫したストーリー」があるか
次に、過去の職歴を新しいものから順番に遡り、それぞれの職場を退職した理由を聞いていきます。
ここでは、一つひとつの退職理由だけではなく、これまでのキャリア全体に一貫したストーリーがあるかを見ます。
また、退職理由について、すべてを職場や上司、同僚などの責任として捉えていないか、自分自身の課題についても振り返ることができているかを確認します。
長所・短所をどこまで自己分析できているか
長所・短所についても質問します。
単に、
「あなたの長所は何ですか?」
「短所は何ですか?」
と聞くだけではありません。
「その長所を活かして、当院でどのような貢献ができると思いますか?」
まで深掘りします。
短所についても、自分の短所を把握できているか、その短所を改善するためにどのような努力をしているか、あるいは短所の特性を仕事でプラスに活かす工夫をしているかまで確認します。
「最大の成功」と「最大の失敗」を聞く
「最大の成功」と「最大の失敗」を聞く
さらに、
「これまでの仕事の中で、これは誇りを持って人に語れるという経験は何ですか?」
と聞きます。
そして、
「その経験を当院でどのように活かせると思いますか?」
と深掘りします。
反対に、
「これまでの仕事における最大の失敗は何ですか?」
とも聞きます。
重要なのは失敗したこと自体ではありません。
その失敗を本人がどのように捉え、原因をどう分析し、その後どのような改善を行ったのかを確認します。
実際に起こり得るトラブルへの対応を聞く
クリニックの配属先で実際に想定されるトラブルをいくつか挙げ、
「あなたであれば、どのように対応しますか?」
と質問することもあります。
例えば、患者さんからクレームを受けた場合、スタッフ同士で意見が対立した場合、業務が立て込んでいる中で想定外の仕事を依頼された場合などです。
正解を当ててもらうことが目的ではありません。
その状況でどのように考え、どのような優先順位で行動するのかを見ることで、仕事に対する考え方やクリニックとの価値観の相性を確認します。
適性検査・オリジナルテストの結果も深掘りする
適性検査やクリニックのオリジナルテストで、点数や評価が低かったカテゴリーについても質問します。
ただし、テストの結果だけで人物を決めつけるのではなく、
「なぜこのような結果になったのか」
「実際の仕事ではどうなのか」
を面接によって確認することが重要です。
履歴書・職務経歴書、適性検査、オリジナルテスト、面接での受け答えなどを総合的に見て判断します。
ここまで一つひとつの質問を深掘りしていくと、その方の仕事に対する考え方や人柄、強み、課題などがかなり見えてきます。
求職者からの「逆質問」も重要な判断材料
そして、クリニックからの質問が終わった後は、求職者からの質問を受けます。
実は、この「逆質問」も重要な判断材料です。
例えば、
「クリニックが今後実現していきたいビジョンについて、もう少し詳しく教えてください」
「配属先では、現在どのような課題がありますか?」
「入職した場合、どのようなことを期待されていますか?」
など、クリニックのMVVや配属先の仕事内容、現在抱えている課題などについて質問し、
「それであれば、自分の〇〇という経験を活かしてお役に立てると思います」
というところまで話せる方であれば、私は高く評価します。
一方で、仕事内容やクリニックの方針にはほとんど関心を示さず、給与・休日・残業などの条件面に質問が極端に偏っている場合は、入職後のミスマッチが起こらないかを慎重に確認します。
もちろん、求職者にとって労働条件は非常に重要ですから、条件について質問すること自体に問題があるわけではありません。
重要なのは「何を質問したか」だけではなく、質問全体からクリニックや仕事内容への関心、入職後のイメージをどの程度持っているかを見ることです。
また、質問がまったくない場合についても、それだけを理由に不採用とするのではなく、
「ホームページなどを見て、気になったことはありませんでしたか?」
「実際に働くとしたら、確認しておきたいことはありませんか?」
などとこちらから促してみます。
それでも質問がなく、クリニックや仕事内容への関心が感じられない場合には、志望度を確認する一つの材料とします。
優秀な人材ほど「選ぶ側」でもある
そして、面接で明らかに優秀だと判断できる方は、当然ながら他院や他企業からも高く評価される可能性があります。
そのような人材の採用では、クリニック側も「選ぶ側」だけではありません。
求職者から「選ばれる側」でもあります。
そのため、本当に入職してほしいと思った方には、先生自らクリニックのミッション・ビジョンや将来像を自分の言葉で伝えてください。
「私たちはこのようなクリニックをつくっていきたい」
「ぜひ一緒に実現していきましょう」
と、これから目指すクリニックの姿を伝えるのです。
給与や休日などの条件面だけではなく、「このクリニックは何を大切にしているのか」「これからどのようなクリニックを目指しているのか」「そこで自分はどのように働き、成長できるのか」をイメージしてもらうことも、採用において重要です。
そして、採用したいという意思が固まっているのであれば、選考を不必要に長引かせず、できるだけ早く判断することも重要です。
一方、採用を迷った場合には、本人の同意を得たうえで、業務内容や実施方法、時間、取り扱いなどに十分配慮しながら、職場見学や職場体験などの機会を設ける方法もあります。
面接だけでは分からなかったスタッフとのコミュニケーションの取り方や仕事への向き合い方なども参考にしながら、クリニックとの相性を確認したうえで、最終的に採用を判断するとよいでしょう。
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