私のお客様には、年商10~30億円規模のクリニックが多いため、最近、このようなご相談をいただく機会が増えています。

「ここからさらにクリニックを成長させるためには、何が必要なのでしょうか?」

年商10億円を超えてくると、経営者として一定の経済的な成功を実感できるようになり、社会的な評価を得る機会も増えてきます。

そうすると、ある程度の規模で満足する先生と、「まだまだクリニックを成長させたい」と考える先生に分かれてきます。

もちろん、どちらが正しいという話ではありません。

しかし、「さらに成長させたい」と考えているにもかかわらず、これまでと同じ経営のやり方を続けていると、どこかのポイントで成長が鈍化してしまうことがあります。

クリニックの成長に必要な「収益性・社会性・教育性」

私は、クリニックを持続的に成長させていくためには、「収益性・社会性・教育性」の3つが重要だと考えています。

これは、私自身が船井幸雄氏から学んだ考え方の一つです。

クリニック経営に当てはめて考えてみると、開業当初から社会性だけを追求しても、必ずしもスタートダッシュできるとは限りません。

もちろん、患者さんにとって必要な医療を誠実に提供し続けることで、数年かけて経営が安定していくクリニックもあります。

一方、開業後、比較的早い段階から成長しているクリニックを見ると、患者さんや地域社会への貢献という「社会性」と、適切に利益を生み出す「収益性」の両方を持っているケースが多いと感じます。

ところが、年商10億円を超えるような規模になってくると、この2つだけでは成長に限界が見え始めることがあります。

そこで重要になってくるのが、3つ目の「教育性」です。

10億円を超えた先では「人の力」が必要になる

年商10億円を超えてさらに規模を拡大しようとすると、院長一人の能力だけで組織を動かすことは難しくなります。

分院長、マネージャー、主任・リーダー、非常勤医師、看護師、医療事務など、多くの人の力を借りながら組織を動かしていかなければなりません。

そのため、ある程度の規模まで成長した後に伸びが鈍化するクリニックを見ると、「より大きなミッション・ビジョンを持てていない」「教育性が弱い」という課題を抱えているケースが少なくありません。

もちろん、教育性が十分でなくても、業界そのものが成長期にあり、市場が急拡大しているタイミングであれば、資金力とマーケティング力によって急速に規模を拡大することは可能です。

しかし、市場が成熟期、さらには衰退期へと移行すれば、それまでと同じやり方だけでは通用しにくくなります。

成長が鈍化するだけでなく、組織の拡大に人材育成が追いつかなければ、離職やマネジメント上の問題など、内部から組織が不安定になる可能性もあります。

そうならないためにも、私は「教育性」が非常に重要だと考えています。

必要なのは知識やスキルだけの教育ではない

クリニックの規模を大きくするためには、人の力が必要です。

そして、人を育てなければ組織は大きくなりません。

ここでいう教育とは、施術の知識や接遇スキル、カウンセリング技術などの教育だけを指しているわけではありません。

むしろ、一定規模を超えたクリニックでより重要になるのは、

「私たちは何のために仕事をするのか」
「患者さんに対して、どのような姿勢で向き合うのか」
「仲間に対して、どのように接するのか」
「社会人・医療従事者として、何を大切にするのか」

といった、仕事に対する価値観や職業倫理、道徳観の教育です。

若い世代には、デジタルスキルや情報収集力などに優れた人材も多くいます。

一方で、社会人として必要となる仕事への向き合い方や、組織で働くうえでの価値観については、世代にかかわらず、入職した時点ですべて身についているとは限りません。

だからこそ、クリニック側が時間・お金・労力をかけて、人材育成に投資していく必要があります。

教育の中心に「バリュー」を置く

教育において重要になるのが、クリニックの「バリュー」と、職業倫理・道徳観の教育です。

そして、その土台となるのが「ミッション」と「ビジョン」です。

ミッションが、

「私たちは何のために存在するのか」

を示すものであり、ビジョンが、

「私たちは将来、どのようなクリニックを目指すのか」

を示すものだとすれば、バリューは、

「そのミッション・ビジョンを実現するために、私たちはどのような価値観を持ち、どのように行動するのか」

を示すものです。

つまり、ミッション・ビジョンを実現するために、バリューや職業倫理・道徳観の教育が必要になるということです。

ミッション・ビジョン・バリューを外部に丸投げしてはいけない

そのため、私はミッション・ビジョン・バリューそのものをコンサルティング会社などの外部に丸投げして作成してもらうことには賛成していません。

そもそも、自分自身の夢や目標を他人に決めてもらうのはおかしな話です。

「どのようなクリニックをつくりたいのか」
「何のためにクリニックを経営するのか」
「将来、どのような形で社会に貢献したいのか」

これらは、経営者である先生自身が考えなければならないことです。

もちろん、私たちのような外部のコンサルタントが、先生の考えを整理したり、言語化したり、仕組みに落とし込んだりするサポートをすることはできます。

しかし、その中身そのものを外部が決めることはできません。

そして、そのミッション・ビジョンを実現するための教育も、最終的にはクリニック自身がつくり上げていかなければならないと私は考えています。

AI時代には「マーケティング以外」の差が大きくなる

今もすでにその兆候はありますが、これからAIがさらに普及することで、マーケティング業務の多くは自動化・効率化されていくでしょう。

これまで収益性を重視する先生方の多くは、マーケティングを熱心に学ばれてきたと思います。

もちろん、これからもマーケティングが不要になるわけではありません。

しかし、AIによって多くのクリニックが一定水準のマーケティングを実行できるようになれば、「マーケティングができること」そのものでは、以前ほど大きな差がつきにくくなる可能性があります。

そうなったときに、より重要になるのは、

「どれだけ社会に貢献できるクリニックをつくれるのか」
「どれだけ大きなミッション・ビジョンを掲げられるのか」
「その実現に向けて人を育てられるのか」
「教育にどれだけ継続的に投資できるのか」

という部分ではないでしょうか。

そして、その前提として重要なのが、トップである先生自身です。

組織はトップの考え方や行動から非常に大きな影響を受けます。

だからこそ、クリニック経営においては、スタッフを教育する以前に、先生自身が自らを磨き続け、経営者としての人格や人間性を高めていくことが重要だと私は考えています。

AIによってマーケティングや業務の効率化が進めば進むほど、最後に大きな差となって残るのは、「人」なのかもしれません。

そして、トップがどのような人間であり、どのような人材を育て、どのような組織をつくれるのか。

私はここに、これからのクリニックの組織力、そして持続的な成長力の大きな差が生まれてくるように感じています。

これからの成長のために「教育」に投資する

そのため、最近では、さらに成長を目指されるお客様の先生方と一緒に、クリニック独自の教育プログラムをつくる機会が増えてきました。

ミッション・ビジョンを掲げるだけでは、組織は変わりません。

それをバリューに落とし込み、さらに日々の教育や評価、行動へと落とし込んでいく。

時間のかかる取り組みではありますが、この積み重ねが、10億円、20億円、30億円と成長していく組織の土台になっていくのではないかと考えています。

マーケティングだけで成長する時代から、「人と組織」で成長する時代へ。

これからのクリニック経営では、「収益性」「社会性」に加えて、「教育性」にどれだけ本気で取り組めるかが、次の成長を左右する重要な要素になるのではないでしょうか。



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