美容クリニックでは一般的に、売上や利益などをKGI(重要目標達成指標)として設定し、そのKGIを達成するための指標としてKPI(重要業績評価指標)を設定しているところが多いと思います。
もちろん、経営においてKGI・KPIを設定し、数値を管理することは非常に重要です。
しかし、売上や利益だけがクリニックの目標になってしまうと、スタッフの中には、「結局、クリニックの売上・利益を上げるために、私たちは働かされているのではないか」と感じる人が出てくるかもしれません。
そこで重要になるのが、「なぜKGIを達成しなければならないのか」まで定義しておくことです。
まずは先生とスタッフが経済的に満たされること
私は、クリニック経営において、まず先生とスタッフが経済的に満たされることが大切だと考えています。
ここで、売上・利益を上げることに罪悪感を覚える先生がいらっしゃいますが、私はその必要はないと思っています。
先生が世のため、人のために適切な医療を提供し、患者さんや社会に貢献しているのであれば、それに見合った報酬を得るべきだと思いますし、一緒に働いてくれているスタッフにも大いに還元すべきです。
もちろん、患者さんにとってメリットが乏しく、自分の家族にも勧められないような医療を高額で提供し、利益を上げるようなことを肯定しているわけではありません。
大前提として、患者さんにとって価値のある適切な医療を提供する。その結果として適正な売上・利益を確保し、先生やスタッフにも還元していくことが重要です。
クリニックを「シャンパンタワー」と考える
まずクリニックが満たされなければ、どれだけきれいごとを言っても、患者さんや地域の方々に継続的に価値を提供していくことは難しいと思います。
イメージとしては、シャンパンタワーのようなものです。

一段目がクリニック、二段目が患者さん、三段目以降が地域社会だと考えてみてください。
まず一段目のクリニックにシャンパンが注がれ、そこからあふれたシャンパンが患者さんへ、さらに地域社会へと広がっていくイメージです。
クリニックに十分な利益が残れば、スタッフの給与や賞与、福利厚生、教育などに還元できます。
さらに、美容医療機器への投資、人材採用、院内環境の改善、新しい医療技術の導入などにも資金を使うことができ、その結果として患者さんに提供できる医療やサービスの質をさらに高めることができます。
一段目でシャンパンを止めてはいけない
一方で、シャンパンタワーのシャンパンが一段目で止まってしまっているクリニックは、長期的に大きく成長することは難しいと私は考えています。
一時的には順調に成長しても、先生やクリニックの利益だけを目的としていると、どこかでスタッフや患者さん、地域社会からの支持を失い、成長が鈍化してしまう可能性があります。
さらなる成長を目指すのであれば、シャンパンを一段目で止めるのではなく、二段目、三段目へと流していかなければなりません。
つまり、患者さんにより良い医療を提供することはもちろん、地域の方々や社会に対して、自院がどのような価値を提供できるのかまで考えていくということです。
KGI・KPIのさらに上にあるもの
そこで重要になるのが、ミッションとビジョンです。
ミッションとは、「私たちのクリニックは何のために存在するのか」という使命・存在意義です。
そしてビジョンとは、「そのミッションの実現に向けて、将来どのようなクリニックを目指すのか」という将来像です。
つまり、ミッションという大きな目的・存在意義があり、その実現に向けて目指す将来像としてビジョンがある、と考えるとわかりやすいでしょう。
このミッション・ビジョンを実現していくためには、当然ながら資金が必要です。
スタッフに還元するためにも、人材を育成するためにも、設備投資をするためにも、新しい医療を導入するためにも、そして患者さんや地域社会により大きな価値を提供していくためにも、クリニックには一定の売上と利益が必要です。
つまり、売上・利益そのものが最終目的なのではなく、ミッション・ビジョンを実現するために必要なものとしてKGI・KPIが存在すると考えるのです。
そして、ミッション・ビジョンを実現し、自分たちの仕事が患者さんや地域社会の役に立っていると実感することが、先生やスタッフの心の充足にもつながっていくのではないでしょうか。
ミッション・ビジョン→KGI→KPIの順番で考える
私は、クリニック経営ではKGI・KPIの上位概念として、ミッション・ビジョンを置くことが大切だと考えています。
たとえば、
ミッション・ビジョン
↓
KGI
↓
KPI
↓
日々の行動
という順番です。
「売上○億円を達成する」という数字だけをスタッフに示すのではなく、
「私たちは、このようなクリニックをつくりたい。そのためには、これだけの売上・利益が必要になる。そのKGIを達成するために、このKPIをみんなで追いかけていこう」
と説明するのです。
そうすれば、スタッフにとってKPIは、単に「売上を上げるために先生から与えられた数字」ではなくなります。
自分たちの待遇や働く環境をより良くし、患者さんにより良い医療を提供し、さらにクリニックが目指すミッション・ビジョンを実現するための指標になります。
KGI・KPIを設定する前に、その数字を達成した先に何があるのかを明確にする。
そして、先生だけではなくスタッフにも、その目的を共有する。
これが、スタッフが同じ方向を向きながら成長できるクリニックをつくる上で、非常に重要だと私は考えています。
最終的に売上・利益は、それ自体を目的とするのではなく、ミッション・ビジョンを実現し、先生とスタッフの物心両面の幸せを目指すために必要なものといえるでしょう。
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