経営相談で先生方とお話ししていると、まれに販促に関して「少し時流から遅れているのではないか」と感じるクリニックがあります。

もちろん、その場合でも原理原則に則った経営ができているクリニックであれば、それほど大きな問題にはなりません。

しかし、そうでない場合には、やはり時流に適応した販促を取り入れていくに越したことはありません。

販促の問題は「人」の問題でもある

販促で時流に適応できていないクリニックについて、先生方とお話ししていて感じることがあります。

それは、人材が固定化され、組織の新陳代謝が起きていないということです。

私は、組織には一定の安定性が必要である一方で、適度な人材の流動性も必要だと考えています。

特に、

「若い新しいスタッフを採用していない」

あるいは、

「採用していても、その若い力を十分に活かし切れていない」

というクリニックは少なくありません。

せっかく新しい人材が入職しても、これまでのやり方に合わせることだけを求め、新しい意見や発想を出せる環境を与えていなければ、組織はなかなか変化していきません。

人にも「世代によるスペックの違い」がある

例えは少し乱暴かもしれませんが、私は「スペック」という観点では、人も家電製品や車に似たところがあると考えています。

例えば、母親が30歳のときに子どもを産んだとすれば、親子には30年という世代の違いがあります。

30年違えば、その間に家電製品や車の性能は大きく進化します。

もちろん、人間を家電製品や車と同じように考えることはできません。

また、年齢だけで人の能力や価値が決まるものでもありません。

一方で、生まれ育った時代によって、身につけている感覚や情報環境、デジタルツールへの親和性、消費行動に対する感覚などが異なることも事実です。

とかく先生や先輩スタッフは、「自分たちの方が経験も知識もあるのだから、若いスタッフより自分たちの方が分かっている」と考えがちです。

確かに、臨床経験や経営経験、患者さんへの対応力、トラブルへの判断力など、経験を積むことでしか身につかない能力は数多くあります。

しかし、その一方で、新しいサービスやSNS、デジタルツールへの適応力、若い世代の価値観や消費行動に対する感覚などについては、若いスタッフの方が優れていることも少なくありません。

重要なのは、どちらが上か下かではなく、世代によって持っている「スペック」が違うと考えることです。

美容医療だからこそ若い感覚を活かす

特に美容医療では、この考え方が重要になります。

美容医療のターゲットとなる患者さんが、

「何に悩んでいるのか」

「どのような治療やサービスを求めているのか」

「どのような情報を見てクリニックを選んでいるのか」

「InstagramやTikTokなどのSNSで、どのようなコンテンツに反応するのか」

といったことを捉え、それを診療サービスや情報発信、販促に反映していかなければなりません。

こうした領域では、ターゲットとなる患者層に年齢や感覚が近い若いスタッフだからこそ気づけることがあります。

ただし、ここで注意しなければならないのは、若いスタッフに治療方針や医学的判断を委ねるという意味ではないということです。

診断や治療方針、施術の適応などの医学的判断は、当然ながら医師が行うものです。

また、医療広告についても、医療法や医療広告ガイドライン、薬機法等を踏まえた適切な確認体制が必要です。

その上で、患者さんのニーズを捉えることや、サービス改善のアイデア、SNSやWebサイトでの情報発信などについては、若いスタッフの感覚を積極的に取り入れる価値があります。

「若い人を採用する」だけでは意味がない

そのためには、人材を固定化させるのではなく、組織の安定性を保ちながら、新しい人材も少しずつ採用し、人材の循環をつくっていくことが重要です。

しかし、若いスタッフを採用するだけでは十分ではありません。

もっと重要なのは、その人たちが持っている新しい感覚や能力を発揮できる環境をつくることです。

例えば、SNSの企画会議に若いスタッフを参加させる。

患者さんから最近よく聞く悩みや要望を共有してもらう。

新しい美容医療のトレンドについて意見を聞く。

Webサイトや院内サービスについて「自分が患者だったらどう感じるか」を率直に話してもらう。

こうした機会を意識的につくらなければ、せっかく新しい人材を採用しても、その人たちは既存の組織文化に染まっていくだけになってしまいます。

ベテランの役割は「若い力を活かすこと」

そして、ここで先生や先輩スタッフの役割が変わってきます。

自分たちの経験や考え方を若いスタッフに教えるだけではありません。

若いスタッフが持っている新しい感覚や能力を引き出し、それをクリニック経営に活かせる環境をつくること。

これも、院長や先輩スタッフの重要な役割だと私は考えています。

経験のある人材が持つ知識・判断力と、若い人材が持つ新しい感覚・適応力。

その両方を組み合わせることで、クリニックは原理原則を守りながら、時流にも適応していくことができます。

人材を固定化するのではなく、少しずつ新しい人材を迎え入れる。

そして、その新しい力を押さえ込むのではなく、活躍できる場所をつくる。

美容医療の変化がますます速くなっている現在、こうした組織づくりも、クリニック経営における重要な仕事の一つではないでしょうか。

先生のクリニックでは、このような視点を持って経営や採用活動を行っていらっしゃるでしょうか。



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