ハイブリッド型クリニックの戦い方は「外(広告)」より「中(院内)」にある
WEB・SNS広告を出せば集患できた「成長期」の終わり
都市部において、美容医療市場は診療圏によって差はあるものの、すでに成熟期に入っているエリアが増えていると私は考えています。
美容医療を受けたい患者さんの需要に対して、クリニックや提供される美容医療の供給が増え、競争は以前にも増して激しくなっています。そのため、WEBやSNSマーケティングを駆使して、何とか集患しようとする動きも加速しています。
かつて美容医療市場が成長期にあった頃は、WEBサイトやSNSアカウントを開設し、広告を出すことで、比較的集患しやすい時代がありました。
しかし現在では、それだけではうまくいかないクリニックが確実に増えています。
打開策がわからず、過去の成功体験から、
「SEO対策をどうするか」
「SNSの投稿内容をどうするか」
「広告をどう改善するか」
といった「外」の集患施策ばかりに焦点を当ててしまっている先生が非常に多いのが現状です。
なぜか、「広告さえ改善すれば集患がうまくいき、売上が上がる」という固定観念にとらわれてしまっているのです。
広告依存の罠 広告費の上昇と現場の疲弊
市場が成熟してきた今、もちろんWEB・SNS広告も大切ですが、私はむしろ、「中(院内)」の改善を重視してくださいとお伝えする機会が増えています。
なぜなら、広告を中心に競争する手法は、豊富な広告予算を持つ美容クリニックとも正面から競合することになり、ハイブリッド型(保険診療+美容医療)クリニックにとって、必ずしも効率の良い戦い方とは限らないからです。
さらに最近、ご相談いただく先生方からお話を聞き、実際のデータを拝見すると、Google広告やMeta広告の運用代行業者に依頼しているものの、運用内容や成果を十分に把握できないまま手数料を支払い、期待した成果につながっていないケースも散見されます。
広告会社やコンサルタント会社へ依頼すること自体が悪いわけではありません。
しかし、CPA(顧客獲得単価)や予約数、来院数、売上などをクリニック側でも把握し、投資対効果を検証できる体制をつくっておくことが重要です。
また、近年のWEB・SNS広告では、「安さ」「キャンペーン価格」を前面に出した広告も多くみられます。
価格だけを理由に来院した患者さんの場合、より安いクリニックが見つかればそちらへ移る可能性もあり、継続的な信頼関係を築くことが難しいケースがあります。
その対応によって、先生やスタッフの皆様が疲弊しているというご相談を受けることもあります。

今こそ、ハイブリッド型クリニックならではの強みを活かした戦い方へシフトすべきです。
ハイブリッド型クリニック最大の強みは「既存患者との信頼関係」
ハイブリッド型クリニックにおいて、私が重要なKPIの一つとして考えているのが、「保険診療患者のうち、美容医療も利用した患者さんの割合」です。
ここでは便宜上、これを「保険診療から美容医療への転換率」とします。
具体的には、以下の2点を徹底します。
・保険診療の患者満足度を愚直に高める
・美容のお悩みを持つ患者さんが、院内で美容医療について適切な情報を知ることのできる仕組みをつくる
重要なのは、保険診療の患者さんに美容医療を無理に勧めることではありません。
患者さん自身に美容のお悩みや希望があり、美容医療について知りたいと思ったときに、院内で正しい情報へ自然にアクセスできる環境を整えるということです。
そして、実際に美容医療を行う場合には、医師が医学的な適応を判断し、治療内容、費用、リスク・副作用などを十分に説明した上で、患者さん自身に選択していただくことが大前提です。
この手法は、WEB・SNS広告のように、広告が当たった瞬間に売上が大きく跳ね上がるものではありません。
しかし、じわじわと美容医療を利用する患者さんが増え、長期的に安定した売上をつくる強固な基盤になる可能性があります。
【保険診療から美容医療への転換を強化するメリット】
・過度な割引キャンペーンへの依存を減らしやすい
・保険診療を通じて、すでにクリニックや医師との信頼関係が構築されている
・クリニックの診療方針を理解してもらいやすく、コミュニケーションが円滑になりやすい
保険診療で継続的な信頼関係が構築されている患者さんは、初めて広告を見て来院する患者さんとはスタート地点が異なります。
すでに医師やスタッフ、クリニックの診療方針を理解していただいているため、美容医療についても相談してもらいやすくなります。
その結果、患者さんにとっても相談しやすく、先生やスタッフにとっても診療やコミュニケーションを行いやすい環境が生まれます。
成果を出しているクリニックの実践例と、今すぐ取り組むべきアクション
実際、私のお客様であるハイブリッド型クリニックの中には、保険診療の満足度を徹底的に高め、「保険診療から美容医療への転換率」を重要KPIとして設定し、院内にさまざまな仕組みを整えることで、美容医療の患者数・売上を着実に伸ばされている医院があります。
もし、本コラムをお読みのハイブリッド型クリニックの先生で、美容医療の集患にお悩みであれば、まずは「保険診療患者のうち、どれくらいの患者さんが美容医療も利用しているのか」を集計してみてください。
私がご相談を受けるクリニックの中には、この割合が3~5%にも満たない医院も少なくありません。
仮に、毎月1,000人の保険診療患者さんが来院するクリニックであれば、3%で30人、5%で50人です。
もちろん、すべての患者さんに美容医療を提案する必要はありません。
大切なのは、美容のお悩みを持っているにもかかわらず、
「このクリニックで美容医療も受けられることを知らない」
「どのような治療があるのかわからない」
「相談してよいのかわからない」
という患者さんを減らしていくことです。
WEBやSNSの広告費に大きな予算を投じる前に、まずは「院内にすでに来院している患者さんへ、美容医療の存在や正しい情報をどのように届けるか」を考えてみてください。
そして、「保険診療から美容医療への転換率」を5%、10%と引き上げられる余地がないかを検証し、院内施策を一つずつ実行していく。
これこそが、ハイブリッド型クリニックが持つ強みを最大限に活かし、成熟期の美容医療市場を生き抜くための重要な戦略の一つだと私は考えています。
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